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推薦の声 Voice of recommendation

1.はじめに

1.歯科における交差感染

医療従事者と患者さん間の相互感染を交差感染という。
歯科における交差感染は、医科に比べても高い可能性がある。
その理由は次の通りである。
1番目に、症例の多くが観血的処置 = 出血を伴う処置で、血液に接触する
機会が多いこと。
2番目に、受診者の大部分が外来であり、感染症罹患の事前検査が困難で
あること。
3番目に、総合病院にある感染対策委員会等の組織的な感染対策が困難であり、
中央滅菌室の様な専用設備が一般歯科医院には無いこと。

3.我が国の血中ウイルスキャリア数

【我が国の血中ウイルスキャリアの数】
発症すればエイズとなるHIV感染症。数は数万人と推測される。
B型肝炎は、諸説あるが、約300万人である。
C型肝炎は約200万人、合せて血中感染症のキャリアは約500万人となり、
我が国の国民の40分の1という確率である。つまり、医療機関における
症例の40件に1件が血液由来の感染症例である。
【一次洗浄の意義】
歯科臨床器具の一部はディスポーザブルであるが、一部は滅菌または消毒して
再利用する。
滅菌・消毒過程において、まず重要な点は、一次洗浄、つまり対象物から
有機物を除去する 作業である。
病原微生物は、対象物の汚れ、つまり、有機物とともに存在し、一次洗浄に
より、後の滅菌・消毒効果の効率が向上する。

4.一次洗浄の必要性

一次洗浄を省くことで次のような弊害が生じる。
消毒対象物に付着している初発菌数(微生物の絶対量)が多い。
滅菌・消毒効果が低下する。
対象物表面の有機物層がバリアとなり、滅菌・消毒を阻害する。
有機物は、塩素系消毒剤の殺菌力を減弱する。
グルタール製剤・高圧蒸気滅菌・機能水による滅菌・消毒により、
対象物に付着したタンパク質を凝着させ、鋏の可動や刃物類の切れ味を
悪化させる。

5.用手・ブラシ洗浄のリスク

前項の理由により、消毒の前に洗浄が必要となる。
一部の歯科医院等では、ウオッシャーディスインフェクターという
温水洗浄消毒機を導入しているが、ブラシによる手洗い洗浄が一般的である。
ところが、ブラシ洗浄には次のようなリスクを伴う。
鋭利な器具類により手指を刺傷する可能性があり、感染の危険性が
非常に高まる。
ブラシの水跳ねにより、周辺環境を汚染する。
ブラシの毛先以下の小さな傷や隅角部にはブラシの先端が届かず、
洗い残しが生じる。

6.用手・ブラシ洗浄による周辺汚染

ブラシ洗浄における水跳ねによる周辺汚染の有無を簡易実験により検証する。
紫外線灯(UVライト)とウオッシングローションから成る、
「手洗い評価キット」を応用する。
ウオッシングローションは、紫外線照射下で発光し、手指洗浄の評価では、
これを手指に塗布して洗浄を行い、残存状態を確認することにより手指
洗浄状態の良否を評価する。
ウオッシングローションを、歯科の使用済器具に見立てた器具に塗布し、
流水下でブラシ洗浄を実施する。
この段階では、一見シンク周りには何の変化も見られない。
このシンクを、洗浄前のUVライト下で高感度撮影をした写真と、
洗浄後にUVライト下で高感度撮影した写真と比較すると、シンク周りに、
ウオッシングローションの飛散痕が観察される。
安易なブラシ洗浄は、周辺環境を汚染する可能性があることが、本実験で
示唆された。

7.酵素系洗浄剤の推奨

用手洗浄、つまり、(ブラシ洗浄)のリスクを纏めると、
①手指刺傷による感染
②水跳ねによる周辺汚染
③細部の洗浄不足がある。
これらを解消するひとつの方法として、「酵素系洗浄剤」の活用を推奨する。
画像は、酵素系洗浄剤「オクターゼ90fX」である。

8.酵素によるタンパク質分解作用機序

「酵素系洗浄剤」によるタンパク質分解の作用機序、つまり、働く仕組みは
以下の通りである。
タンパク質は、複数のアミノ酸が鎖状につながったもので構成される。
血液や組織片等の生体性タンパク質は、「高分子タンパク質」であり、
その特徴として、「疎水性」、つまり、水に馴染まない性質がある。
したがって、水洗では、生体性タンパク質を除去することは容易でなはない。
タンパク質に酵素系洗浄剤、つまりタンパク分解酵素を作用させると、
アミノ酸同士の結合の腕に働き、この腕を所々で切断する。
その結果、アミノ酸の数が少ない「低分子タンパク質」に変化する。
低分子タンパク質これは、「親水性」、つまり、水に馴染み易い性質があり、
簡単な水洗により容易に除去できる。
これがタンパク分解酵素の作用機序である。

9.「オクターゼ90fX」の優位性

「オクターゼ90fX」が、他のタンパク質分解酵素に比べて、どの程度優位性が
あるか、 ゼラチン皮膜分解を用いた試験で確認する。
「ゼラチン」とは、タンパク質が変性したものである。
試験紙には、下地の上に黄色・赤色・黒色、のゼラチン皮膜が積層されている。
試験管を3本用意し、左の試験管には「オクターゼ90fX」(500倍希釈)を、
2番目の試験管にはA社製の酵素系洗浄剤(500倍希釈)を、3番目には
水道水を、それぞれ等量ずつ入れる。
各試験管に、ゼラチン皮膜3枚をそれぞれ投入し、その時間的経過を観察する。
本動画では10分間を10秒に短縮する。
「オクターゼ90fX」では、黒色・赤色・黄色の皮膜が既に分解され、
白の下地が見えて始める。
A社酵素系洗浄剤では黒色が分解され、赤色がわずかに残存している。
水道水では変化が見られない。
試験紙を各試験管から出すと、「オクターゼ90fX」は白色の下地がほぼ
完全に露出しており、A社洗浄剤は、黄色の下地がまだ残っている。
水道水は全く変化が生じていない。
以上の実験により、他社製品と比較した「オクターゼ90fX」の優位性が
示唆された。

10.「オクターゼ90fX」の応用法

酵素系洗浄剤「オクターゼ90fx」の応用法は次の通りである。
1番目は浸漬法。対象物を浸漬するのみであり、非常に簡単に出来るという
メリットがある。
2番目は超音波洗浄機併用法。浸漬と超音波洗浄機を併用する方法であり、
物理的作用と化学的作用を併用することにで、タンパク質分解の効率が
非常に高くなる。
3番目は泡洗浄法。これは、泡容器というプラスチック製の容器に洗浄剤を
入れ、吐出させた洗浄剤の泡により対象物を包み込む方法である。
それぞれについて、使用方法を説明する。
超音波洗浄機併用法は、浸漬と同時に超音波洗浄機を作用させる方法ある
(画像省略)。
泡洗浄法は、器具を泡で包埋、つまり包み込み、泡の崩壊と流液により洗浄
する方法である。
画像は、泡容器から吐出した泡で対象物を包埋し、泡が消失するまで、約5分間
放置し、その後に水洗いする。
通法どおりオートクレーブにて滅菌を行う。
泡洗浄法の特長は、液を使い回しせず、掛け流して使い捨てるため、
器具から器具への汚染の転移の恐れがないことにある。

11.印象体の泡洗浄法

歯科独特の汚染として、「印象体」という口の中の型取りをした歯型がある。
印象体には、血液の付着が見られるものがあり洗浄と消毒が不十分な印象体に
石膏を流して作製した石膏模型は、歯科技工領域のみならず、歯科領域全体を
汚染する可能性がある。
このような印象体についても、泡洗浄法が有効である。
泡容器から吐出させた泡により、印象体表面全体を埋包する。
泡が消えるまで、約5分間放置し、その後に軽い水洗により洗浄剤を洗い流す。
泡洗浄の後、印象体専用塩素系薬剤や、印象体専用消毒装置等の適宜の方法で
印象体を消毒した後、石膏泥を流し込み、義歯や金冠を作るための作業用模型
を作製する。

12.印象体の泡洗浄効果

泡洗浄の効果を、実際に視認する。
印象採得(型取り)後の印象体には、画像の様に血液が付着している場合が
ある。
拡大画像により、明確に血液の付着が明らかに目視できる。
このような血液汚染に対して泡洗浄を行うと、全く血液を視認出来なくなる。
このように、印象体表面に付着した血液を分解することで、微生物の相当量が
除去できていると考えられる。

13.酵素系洗浄剤による印象体洗浄の評価

印象体の洗浄・消毒工程における重要な留意点は、寸法変化、つまり「くるい」
を最小限に止めることにある。
「くるい」が生じた印象体から作製したる金冠や義歯等は、口腔内に上手く
適合しない。
そこで、我々は、タンパク質分解酵素による印象体の寸法変化についての
検証を行い、2006年の日本歯科技工学会学術大会に、画像に示す実験結果*
を発表した。
印象体に、タンパク質分解酵素と印象体用消毒剤を作用させて、その寸法変化
を計測したものであり、その結果、3時間静放置しても、水中やデジケータ
中保管に比べて、寸法変化は微小であったとの結果を得た。
タンパク分解酵素は、印象体に悪影響を与えないことが、この実験結果により
示唆された。

* 佐藤明子,大西正和
試作除菌システムが印象体の寸法変化に与える影響について
日本歯科技工学会雑誌 Vol. 27  2006年12月

14.まとめ 酵素系洗浄剤の効果

酵素系洗浄剤の効果についてまとめる。
1番目に、作業者が消毒対象物に触れることが少なくなるので、感染のリスクが軽減する。
2番目に、消毒・滅菌の確実性が向上する。
3番目に、人体に対する負荷の少ない消毒薬への転換が可能となる。
4番目に、同じ消毒薬であっても、消毒作用時間の短縮が可能となる。
5番目に、消毒・滅菌後の夾雑物として有機物等の付着が無くなり、刃物類が切れなくなる、鋏類が動き難くなる等の弊害が低減する。
但し、一次洗浄は、消毒・滅菌の前に行う作業であり、当然、対象物は汚染されている可能性がある。作業にあたっては個人防護具の着用、廃液の適性な処理など細心の注意を要することは言うまでもない。

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